近未来のがん治療法には副作用が無い理由

がん免疫療法とは、患者の生来持つ免疫機能を用いてがん細胞を攻撃するがん治療法

がん患部を切除する「手術」、抗がん剤などの薬品でがん細胞を殺す「化学療法」、放射線で癌細胞を殺す「放射線治療」が、従来のがん3大療法。それぞれの治療技術は格段に進歩していることで、近未来に予想されていた「がんは治る病気」に近づきつつある。しかし、現状では まだ がん根絶へは遠い道のりが残っている。

2000年以降から第4のがん治療法として、免疫療法でのがん治療を模索する研究が活発化している。その一つが、患者の免疫機能を活用し、癌に立ち向かう「免疫治療」だ。文字通り、免疫力を高めることで、がん細胞を駆除するがん治療法だ。

免疫治療には、免疫力を強化する栄養成分(βグルカンなど)が入っている健康食品サプリメントを摂ったり、体温を高く保ったりする治療から、コメディーなどのテレビを見て大笑いすることで免疫力を上げる治療法まで、広い意味では免疫力の強化として、免疫治療と言えだろう。これらの免疫治療は人間が古くからの体験談として語り継いできた古典的な治療法でもあり、実際に軌跡のがん克服事例もある。

免疫治療に共通する特徴は、副作用が少ないこと。3大療法に共通する副作用とがん患者の体力低下は、QOL(生の質) が低下する点で看過できない問題を孕みつつある。しかし、免疫治療では、総じて副作用が無い。副作用が無いことはがん患者が治療で疲弊することなく、治療を継続できる利点がある。

最近注目されている免疫治療の一つである免疫細胞療法。体内に侵入した異物を排除する免疫システムの働きを最大限に生かし、免疫細胞が癌を的確に攻撃できるようサポートするという発想から開発された。

細胞ががん化して「がん細胞」になると、表面に異常を示す抗原が出現することが判っている。免疫細胞は、このがん抗原を目印として、がん細胞を攻撃するのだ。このため、日常に体内で毎日5000個前後も発生しているがん細胞は免疫細胞によって駆除されている。しかし、何かの原因でバランスが崩れたことで、発生するがん細胞が増えたり、免疫に駆除されるがん細胞が減ったりすると、がん細胞が大量に増殖して がんが発病するのだ。

免疫細胞療法の一種である「がんワクチン療法」は、人工的に合成されたがん抗原を注射することで、免疫細胞が がん細胞と結合した抗原を「敵」と認識して攻撃するがん治療法だ。

がんワクチン療法の著しい快復例では、他の臓器にも転移しているステージ4の乳癌、いわゆる末期がんの告知を受けた53歳の米国人後から、5ヶ月間に6回の癌ワクチン接種を受けたところ、5年後にはがん細胞が体内から消失した。通常のステージ4の末期乳がんの5年生存率は20%以下にもかかわらずだ。

また、膵臓癌の手術を受けたが、摘出に命に危険を伴う場所にがんがあったために摘出を断念した男性は、臨床治験で癌ワクチンの投与を受けると、9カ月後の検査で癌は完全に消滅した。その他、手術が不可能とされた膵臓癌患者5人のうち3人の症状ががんワクチンの投与で安定状態を継続しているという。

免疫細胞療法は発展途上の治療法ゆえに、がん患者全員に効くがん特効薬にはまだ程遠い。しかも、日本では健康保険の承認を受けていない治療法なので、医療費(約150万円前後)が全額自己負担となってしまう点も高い障壁となっている。

しかし、アメリカでは既に前立腺がん治療に効果のある癌ワクチン(抗がん剤「プロベンジ」)が、米食品医薬品局(FDA)の認可を受けたことで、がん治療への投与が増えている。その他の免疫細胞治療に関する臨床研究も進行中で、研究は日本など世界中へと広がっている。

ここで、癌ワクチンの最大の問題だが、がん患者自身の癌の抗原とワクチンが合致しないと治療効果が見込めないことだ。万人向けに人工合成されるワクチンでは、効果の出るがん患者が限られてしまうのだ。

患者のがん細胞が持つ抗原とワクチンの抗がんが一致しなければ免疫細胞治療の効果は出ない可能性が高いため、事前の適合性の確認が不可欠となっている。この点の改良を目指したのが、がん患者本人のがん細胞を抗原として使う「樹状細胞ワクチン療法」であり、近未来のテーラーメイド治療と言える。

さらには、がん細胞を攻撃する免疫細胞「T細胞」をがん患者自身から採取して体外で増殖、後に増えた免疫細胞を体内に戻す自己免疫細胞療法の研究が進みつつある。

旧来の抗がん剤や放射線によるがん治療では、癌細胞を直接的に叩く効果は高いものの、正常細胞へのダメージも大きく、吐き気や脱毛などの副作用の被害は甚大で、さらには、免疫機能も大きく損なうリスクがあった。また、治療中に癌細胞が薬剤抵抗力を持つことで、治療効果が弱まってしまう問題があった。

人体に生来備わっている免疫機能を利用するために免疫治療には副作用が無い。そのため、がん患者は生活の質を保ちつつ、癌の進行度合いに関わらず繰り返し治療を受けることができる。癌の進行を遅らせたり止めたりする効果が期待できる。

従来の手術、抗がん剤、放射線の3大がん療法と平行して治療できることも、免疫療法の強みの1つだ。放射線やある種の抗癌剤にはがんに対する免疫の働きを高める作用があり、免疫治療との併用で相乗効果が望める。また手術で腫瘍を取り除いた後に、画像診断では分からない微小ながん細胞は、免疫細胞の格好の駆除対象となるからだ。

免疫治療は なるべく早い段階から採用するほど高い効果が期待できる。肺癌の手術後に免疫細胞治療を受けた患者の5年生存率は、免疫治療を受けていない患者より20%以上も高いという研究報告もあるのだ。手術では小さすぎて切除が困難な微小な癌細胞は、免疫細胞で駆除されることで、がん再発やがん転移を抑制できるからだ。

がん免疫治療で最大の効果を上げるためには、免疫力がまだ弱っていない早期から実施することだ。

がんワクチンは前立腺癌用のワクチン「プロベンジ」が2010年にFDAに認可された後、2011年には転移性メラノーマ(悪性黒色腫)に効果のある抗がん剤「エルボイ」も認可された。エルボイは、免疫が本来の力を発揮できないよう邪魔する分子を抑え込むことで、免疫ががん細胞を駆除するがんワクチン。

米国立癌研究所(NCI)によると、150種類以上のがんワクチンが研究の途上にある。がんワクチンの治療対象は、死に至るリスクが高い膵臓がんや脳腫瘍から、完治が容易な精巣癌 まで多様だ。 2011年には、転移性の卵巣癌と乳癌に対する臨床試験でがんワクチン「PANVAC」が一定の効果を示したと発表された。また、脳腫瘍摘出後の患者への がんワクチンの投与で生存期間が約1年延びたとの報告もある。

この数10年間に免疫の仕組みが解明され、実用化が進んでいる免疫のメカニズムを利用して癌治療を闘う時代になりつつあるのだ。

免疫力を活用した第4のがん治療=免疫治療は、下記の3つに分類される。特徴と費用対効果を十分に理解した上でがん治療を受けねばならない。

1. がん細胞に免疫攻撃の目印を付ける免疫療法

癌細胞にある特有の目印(=抗原)に対して、免疫細胞(キラーT細胞)に攻撃させるがん治療法。人工合成したタンパクやペプチド(タンパク質のかけら)を目印として体内へ注射する癌ワクチン治療と、がん患者の血液中から免疫細胞の一種樹状細胞を分化し、患者本人の癌抗原をこの樹状細胞に教え込んだ上で、体内に戻す樹状細胞ワクチン療法がある。

2. がん細胞を攻撃する免疫細胞を増殖させる免疫療法

がん細胞を駆除攻撃する免疫細胞であるキラーT細胞、NK(ナチュラル・キラー)細胞を患者自身から採取して、体外で培養増殖し、数を増やした後にがん患者の体内に戻すことでがん細胞の駆除を目指す治療法。

3. 既存の免疫力を活性化する免疫療法

生来備わっている免疫力を活性化することで、がんの駆除を目指す治療法。

サプリメント療法(食事療法)

免疫力を強化できる効果成分はβグルカン(ベータグルカン)という成分の実績が最も古く信用できるだろう。βグルカンを含むサプリメントや健康食品は、きのこ原料から酵母原料まで大量に供給されている。価格の大小も激しく、高額品には注意が不可欠。近年に精製技術が向上したパン酵母原料のベータグルカン健康食品が優良品だろう。

温熱療法

免疫細胞は体温が上がることで活性化されることが判っている。治療機器を用いてがん患部周辺のみを暖める治療法から、”湯治”つまりは入浴で体温を上げる治療法まで、体温を適度に上げることは、がん治療で重要な免疫力の活性化に寄与することでがん細胞の減少に結びつく。高額の治療器を買う必要はなく、お風呂にゆっくりと浸かるだけでも効果はある。ただし、ユダル=体力低下するほど頑張ることは逆効果なので要注意だ。可能なら適度な運動による体温上昇は、さらに良である。

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