すい臓がん新薬はナノカプセルで効果向上

すい臓がん新薬の最終治験が8月から台湾で開始される。

最終の第3相臨床試験が実施される抗がん剤新薬は、「ナノプラチン」。新薬ナノプラチンは肺がんなど多くのがんで使われている抗がん剤「シスプラチン」を、マイクロカプセルに封入することで、副作用を低減しつつ、効果を増大させた。

マイクロカプセルは外側が親水性ポリマー、内側が疎水性ポリマーという2層構造に設計されており、 抗がん剤が徐々に放出されてがん組織に蓄積されるため、 抗がん作用を増大しつつ、副作用も減らす効果があるとされる。

実施される臨床試験は、転移性または進行性のすい臓がんが対象で、既にすい臓がんに用いられている抗がん剤「ゲムシタビン」との併用効果を検証される。総数300件余りの症例へ投与される予定。

膵臓がん抑制と転移予防効果の新投薬法

難治癌である膵臓(すいぞう)がんの治療に効果の高い新治療法が開発された。マウス実験では、全てのマウスのすい臓がん進行が停止でき、転移が抑制されたという。

抗がん剤は血管の隙間から漏れ出してしまい、ターゲットのがん患部まで十分な薬量が届かないことが問題だった。さらに、がん患部以外で漏れ出た抗がん剤が、正常な細胞を傷付けることで副作用が出るのだった。

すい臓がんの新しい治療法は、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS:Drug Delivery System)という手法を利用した。 がん治療の標的となるがん細胞だけに抗がん剤を届けるためのDDSは、複数の抗がん剤分子をまとめて球体を形成させた。球体となった抗がん剤は、途中の血管からは漏れないが、がん細胞の血管の壁は隙間が広いため、壁を通り抜けて標的のがん細胞に辿り着き、攻撃できるのだ。

新治療法の検証のために膵臓がんを自然発生させたマウス30匹に対して、有効性が検証された。
A) DDSによる治療グループ
B) 通常の抗がん剤治療グループ
C) 治療をしないグループ

B,Cのグループは、それぞれ肝臓に8匹ずつ、消化管に7匹ずつがん転移が発生し、 56日間で半数が死亡した。しかし、AのDDS治療を施したグループでは、全てのマウスの膵臓がんの進行が止まり、全てが70日間生存した。転移は56日目時点で2匹のみ肝臓に転移しただけだった。

がん細胞に直接抗がん剤を届ける新治療の効果は高く、 がんの進行や転移を抑制し、生存率が高められる期待が高まっている。

東京大学が発表した研究成果は、24日付の米科学アカデミー紀要電子版に掲載。